「スマートビルディングはなぜ必要なの?」「導入するとどうなるの?」このような疑問を抱えていませんか?スマートビルディングは、現代のオフィスビルや商業施設において、ますます重要性を増しています。IoTやAIなどの革新的な技術を活用し、省エネ・省コスト化を行えるため、ビルの管理者や利用者に高く評価されているのです。しかし、同時に抱えている課題もあります。本記事ではスマートビルディングの概要を理解し、課題を解決するために、仕組みや求められる背景、市場規模などについて解説します。スマートビルディングが求められる背景や導入効果を理解すると、自社ビルに取り入れるイメージが湧くでしょう。ぜひ参考に読んでみてください。スマートビルディングとはスマートビルディングとは、IoTやAIなど最新のデジタル技術を活用し、エネルギー消費や建物管理の効率化を図った建物です。スマートビルディングでは、オフィスや会議室、共用スペースなど、さまざまな場所にセンサーを取り付けます。そしてビル内の温度や湿度、大まかな人流などのデータを収集し、可視化します。施設内の設備やデータを一元管理し、エネルギー使用量の削減や利便性・快適性の向上を図っているのです。この他にも、5Gを活用したロボットによる省人化やビル管理の効率化、AIを使ったセキュリティシステムによるビルの安全強化などにも取り組んでいます。最先端の技術を駆使して、効率的で安全な運営をしているのです。AIによる効率化を目指す「スマートオフィス」を建物全体に拡大したものが「スマートビルディング」です。さらにデジタル技術を駆使してインフラを整備し、利便性や満足度の向上を目指したのが「スマートシティ」になります。スマートビルディングが求められる背景オフィスビルの設備は、時代に合わせて更新が必要で、絶えず改善が行われてきました。1980年代、古いビルの建て直しがブームとなり「インテリジェントビル」という言葉が流行りだしました。IT機器への対応のため電気容量を増やし、サーバー室を設けたり、IT機器の排熱に対応して空調設備の強化が行われたりしたのです。2020年代に入ると、デジタル技術をモノに搭載し、高度な管理や情報処理能力をもたせる「スマート化」が進みました。そして、建物のスマート化で利用者の情報を収集・分析し、利便性や快適性を向上させる建物管理に注目が集まったのです。上記の時代の流れを受け、スマートビルディングが求められる要因には、以下のことが挙げられます。新型コロナウイルスなど感染症対策カーボンニュートラル実現に向けた貢献求められる快適性と利便性日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030年度のCo2排出量を、2013年度比で46%の削減を目標にしています。参考:経済産業省|地球温暖化対策計画 P.11消費エネルギーを抑制すると、温室効果ガスやCo2排出量の削減につながるため、カーボンニュートラル実現に向けた貢献が期待されます。また、新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、密を回避し、ソーシャルディスタンスを確保するニーズも高まっています。求められる快適性や利便性はさらに向上し、スマートビルディングは今後さらに進んでいくでしょう。スマートビルディングの市場規模スマートビルディングの市場規模は、年々拡大しています。株式会社グローバルインフォメーションが2022年に発表したレポート「スマートビルディングの世界市場」によると、スマートビルディングの市場規模は2021年で約726億米ドルです。2026年までに1,216億米ドルに到達、2030年には4,505億3,000万米ドルに市場規模が拡大することが予測されています。アジア太平洋諸国がデジタル技術の導入を改善するための支援策を講じており、これが市場の成長を支えているといわれています。参考:株式会社グローバルインフォメーション|プレスリリース、株式会社グローバルインフォメーション|市場調査レポートまた、ビルディングオートメーションシステム市場規模は、2024年に2,010億8,000万米ドルになると推定されています。2029年までには、3,320億1,000万米ドルに達すると予測されているようです。ビルディングオートメーションシステム(BAS)とは、ビル制御システムと呼ばれ、建物全体の電気や機械システムを制御する役目のことです。引用:モルドールインテリジェンス|ビルディングオートメーションシステムの市場規模と市場規模株式分析-成長傾向と成長傾向予測(2024〜2029年)スマートビルディングは、さまざまなシステムの連携によって可能となるため、スマートビルディングに関わるすべてのシステムが急務で拡大しています。人口の増加や夏場の気温上昇の影響によって空調システムへの需要が高まり、さらに市場規模は拡大するでしょう。関連記事:スマートビルディングの日本の市場規模と導入のメリットを解説スマートビルディングを実現する技術スマートビルディングで活用される、代表的な技術を5つご紹介します。IoTAI5GBEMSビルOSそれぞれ順番に見ていきましょう。IoTIoTは「Internet of Things」の略で「モノのインターネット」を指します。建物や家電製品など、本来インターネットとつながっていないモノを、インターネットに接続できるようにすると、データの情報交換が行えるようになります。IoTセンサーを取り付けることにより、膨大なデータが収集可能です。スマートウォッチやインターネットに接続できるテレビ、スマートスピーカーなどはIoT技術が活用されています。IoTを活用すると、空調設備や照明、オフィスの扉の鍵などの設備をインターネットに接続できます。これにより、遠隔システムを使った建物全体の一元管理が行えます。AIAIは「Artificial Intelligence」の略で「人工知能」のことです。これまで人の手で行ってきた、データ分析や学習をAIが行います。スマートビルディングにおけるAIの活用事例としては、空調設備の制御が挙げられます。空調設備のAIは、IoTセンサーで集めた大まかな人流や温湿度などの情報を元に、最適な温度を割り出して調整するのです。たとえば「9時の会議に合わせて空調を強くする」という行動パターンを学習させると、未来の温度まで調整できるようになります。AIを活用すると、24時間365日ビルのデータ収集と分析ができます。エネルギー消費やセキュリティ設備などの最適化を図る上で、なくてはならない技術です。5G5Gは「5th Genetation」の略で「第5世代移動通信システム」を指します。アナログ方式で通信を行っていた第1世代から約10年ごとに世代交代され、2020年代に登場したのが5Gです。超高速かつ超低遅延でありながら、多数同時接続や大容量の通信を可能にします。スマートビルディングでは、IoTやAIを活用するために優れた通信環境が必須です。たとえば、自律走行型のロボットは、遠隔地からでも常時リアルタイムで複数台を制御する必要があり、通信が遅れてしまうとロボットの動作に支障をきたします。清掃ロボットが正確な指示を受け取らなければ、安全性や効率性が大きく損なわれるでしょう。スマートビルディングのポテンシャルを引き出すには、5Gが必要不可欠です。BEMSBEMSは「Building Energy Management System」の略で「ベムス」と呼ばれます。オフィスビルのエネルギー消費量の一元管理や分析を行い、最適化を実現するシステムです。ビル内の快適性を保ちながら、空調や照明の自動制御を行います。BEMSとIoT、AIを連携させると、きめ細やかな制御が可能になり、快適性と省エネの両立ができるようになります。ビルOSビルOSとは、ビル内の設備やデータを統合し、効率的な管理と運用を可能にするシステムです。「ビルオペレーティングシステム」の略です。スマートビルディングがもつ機能やデータを、一元的に管理・運用するデータ連携基盤のことで、主に以下の役目を果たします。ビル設備と外部システム間で、データ連携を可能にするビル設備と外部システム間で、データ送受信を可能にするビル設備から収集したデータに属性を付与し管理する設備追加や変更に対して、柔軟なデータの管理を可能にするビル管理業務の高度化や効率化には、なくてはならないものです。スマートビルディングの導入効果スマートビルディングの導入効果は、以下の4つです。エネルギー効率の向上とコスト削減環境への配慮と持続可能性への貢献ビルの安全性強化建物管理の効率化一つひとつ見ていきましょう。エネルギー効率の向上とコスト削減スマートビルディングの導入により、エネルギー効率の向上とコスト削減が可能です。建物で日常的に使用されているエネルギーは空調をはじめ、照明、警備システム、エレベーター、OA機器、電化製品など多岐にわたります。スマートビルディングを取り入れると、データの可視化や大まかな人流の解析が可能になり、必要なときに必要な分だけ稼働できるようになります。使用するエネルギー量を最適化することで、省エネと省コストが実現するのです。とくに、重要な役割を果たすのが「BEMS」です。ビル内で使用されている機器やセンサーからエネルギー消費データを収集、傾向を分析して、エネルギー供給の最適化の実現に貢献します。環境への配慮と持続可能性への貢献スマートビルディングの導入により、環境への配慮と持続可能性への貢献が期待できます。前述しましたが、スマートビルディングが求められる背景には、カーボンニュートラル実現に向けたCo2排出量の削減という目標があります。必要なときに適切な電気の供給や空調の稼働を行うことで、無駄なエネルギー消費が減り、環境への配慮に直結するのです。また、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用で、持続可能性への貢献も期待できます。再生可能エネルギーは、日本国内にある資源です。石炭や天然ガスなどのエネルギー資源が少ない日本は、主要国と比べてエネルギー自給率が低いです。引用:資源エネルギー庁|日本のエネルギー問題をグラフで学ぼう(前編)そのような日本にとって、エネルギー効率の向上につながるスマートビルディングは、重要な役割を担うでしょう。ビルの安全性強化スマートビルディングにより、セキュリティ面の安全性が向上します。AIを活用した画像認証技術では、ビルのセキュリティゲートやオフィスへの入退室を顔や瞳の認証で行います。従来のIDカードやパスワードによる認証よりも、迅速かつ正確な入退室の管理が実現できるのです。また、監視カメラシステムを応用し、不審者対策も行えるようになります。さらに、大まかな人流を把握するため、人が多く集まっている場合に、感染症対策の一環としてアナウンスを流すことも可能です。ビルの安全性が保たれると、安心して利用できるでしょう。建物管理の効率化スマートビルディングでは、建物管理の効率化も期待できます。たとえば、以下のような具体例が挙げられます。ゴミ箱のモニタリング清掃ロボットや警備ロボットの導入エレベーターとエスカレーターの効率運用利用者や来店者のデータ収集と分析これらは今まで人の手で行い、多くの人員を必要としてきました。しかし、スマートビルディングを導入すると、人件費を削減できます。 スマートビルディングでは、ビル管理の効率化や省人化だけでなく、利用者の快適性や効率性の向上も期待できます。スマートビルディングの課題メリットの多いスマートビルディングですが、実現に向けては導入から運用まで課題があります。 課題を理解したうえで、スマートビルディングを検討しましょう。 課題は以下の2つです。 導入およびメンテナンスの高コスト不十分なセキュリティ対策順番に解説していきます。導入およびメンテナンスの高コストスマートビルディングを導入する大きな課題の一つは、導入とメンテナンス時にかかる高コストです。 スマートビルディングを導入するには、建物内の各所にセンサーや制御機能、管理機能を備えた設備の設置が必要で、多額の初期費用がかかります。新築の場合は建設コストが必要です。既存のビルを改修する場合も同様に費用が発生し、さらにテナントとの調整が必要になります。効率化や利便性を目指して高度なシステムやサービスを導入するほど、費用は高額になるのです。導入後にはメンテナンス費用やシステム利用料が発生します。そのため、スマートビルディング化に踏み切るのを難しいと判断する企業やビル管理のオーナーもいるでしょう。しかし、スマートビルディング化すると、ビル管理が効率化し省エネや運用コストの削減が行えるようになります。 また、利用者にとっても快適な空間作りができるため、集客にもつながるでしょう。長期的にみれば初期投資の回収も可能といえます。不十分なセキュリティ対策 導入における課題の二つ目は、不十分なセキュリティ対策です。スマートビルディングでは、 IoTによって建物内のあらゆる情報を一元管理します。そのため、システムの安全性が低いとサイバー攻撃を受け、ビルの情報流出や管理停止の恐れがあるのです。 情報流出やシステムエラーが発生すると、ビルの管理者だけでなく利用者にも損害がおよびます。 また、電力によってコントロールされているため、停電時や災害時の対策や不具合が発生したときの対応も重要です。 トラブル発生時には、システムの速やかな復旧やトラブルへの対応が可能な従業員の確保・教育が必要になるでしょう。 スマートビルディングを導入する際は、システムセキュリティに対する高い意識と取り組みを行ってください。スマートビルディングの導入事例 最新の技術を取り入れたスマートビルディングが、どのように役立っているかを実際の事例を用いて紹介します。 日本国内と海外のスマートビルディングの導入事例を見ていきましょう。 東京ポートシティ竹芝 オランダの The Edge 事例を確認することにより、導入後のビルでの過ごし方がイメージできます。日本国内の取り組み | 東京ポートシティ竹芝(ソフトバンク・東急不動産)「 東京ポートシティ竹芝」がある竹芝エリアは、スマートシティの国家戦略特区です。ソフトバンク株式会社と東急不動産株式会社が、スマートシティの先駆けとなる最先端のスマートビルの実現を目指しています。 各所にデバイスが設置され、収集したデータを企業やテナントにリアルタイムで提供します。 テナント・ワーカー・ビル管理者、それぞれに行われている取り組みは以下の通りです。テナント・店舗ごとに来店者の属性を分析し、レポートを提供する・クーポンの自動配信データを統計化し、各店舗に施設利用者の人数や属性を提供する・店舗ごとの満席や空席状況をリアルタイムで表示し、空席状況に応じてクーポンを配信するワーカー・エレベーターホールや飲食店の混雑状況を配信する・入館時にAIによる顔認証を行う・エレベーターと入館ゲートを連携し、目的階への効率的な誘導を実現するビル管理者・防犯カメラの映像をAIがリアルタイムで解析し、異常を感知する・警備スタッフへの通知を行う・ゴミ箱に搭載された超音波センサーで容量を検知し、ゴミ回収を効率化する・自走ロボットによる床清掃で省人化を図るスマートビルディングの活用により、より快適で効率的な都市空間を実現できることがわかります。世界の先進事例 | オランダのThe Edge オランダのアムステルダムにある「The Edge」は、ソーラーパネルや雨水の活用によりサステナビリティに優れていると世界的に評価されています。 15階建てのオフィスビルで、欧州で最高水準の環境性能を誇っているのです。 スマートフォンアプリによるスケジュール管理が特徴で、組み込まれた2万8000個のセンサーで、働く人々の生活をサポートします。主に、以下の具体例が挙げられます。従業員の車が建物に近づくと検知し、駐車場の空きスペースまで誘導する従業員に専用デスクはなく、必要に応じてその日に使うデスクを選ぶことでスペースの効率化を図るデスクにワイヤレス充電器が内蔵されており、スマートフォンの充電問題が解決される好みの照度や温度に室内環境を調整できる機能が、アプリに搭載されている 高い環境性能と先進的な働き方で世界的に注目度が高まっています。まとめこの記事では「スマートビルディングの仕組み」や「求められる背景」について解説しました。スマートビルディングはIoTやAIなど、最先端の技術を活用した建物であり、効率的かつ満足度の高い利用が可能です。環境への配慮や感染症対策などを背景に、現在も導入や研究が進んでいます。メリットの多いスマートビルディングですが、導入やメンテナンス時にかかる高額なコストやセキュリティ対策など、課題も残されています。スマートビルディングのメリットや抱えている課題を理解し、自社ビルでの活用を検討してください。導入する際は、課題を意識して計画を進めましょう。株式会社メンテルではスマートビルディングの導入を、アプリケーションやソフトウェアで支援しています。スマートビルディングに取り組む企業の担当者は、この機会にぜひホームページを覗いてみてください。