「エネルギーマネジメントシステムってなに?」「どのシステムが自社に最適かを知りたい」このような悩みを抱えていませんか。エネルギーマネジメントシステムは、エネルギーを効率的に管理し、コスト削減や環境負荷の軽減を実現する技術として注目されています。ただし、オフィスビルの既存の設備がシステムに合わなかったり、導入コストが高くなったりするため、取り入れるのをためらう企業も多いのが現状です。それでも、エネルギーマネジメントシステムを導入すると、効率的なエネルギー管理や長期的な運用改善が期待できるため、導入を検討する価値があります。そこで本記事では、エネルギーマネジメントシステムの仕組みや種類、導入すると得られるメリットを解説します。本記事を読むと、自社の建物にぴったりのエネルギーマネジメントシステムが選べ、省エネの実現につながるでしょう。エネルギー管理を最適化したい方は、ぜひ最後までご覧ください。エネルギーマネジメントシステム(EMS)とはエネルギーマネジメントシステムとは、工場・ビル・住宅などのエネルギーの使用量を可視化し、最適な運用を実現するためのシステムです。「EMS」や「エネマネ」とも呼ばれています。その仕組みは以下の通りです。各フロアの空調や照明にセンサーやカメラを設置センサーやカメラにより電力の使用量や室温、湿度などを計測計測されたデータをクラウドや専門のデータベースに送信離れた場所からでも各フロアのエネルギー使用量を監視上記の仕組みにより、無駄なエネルギー消費がどこで発生しているのかを特定できます。さらに、エネルギーマネジメントシステムには、契約電力を超過しそうになると通知されるアラート機能や、設備の自動制御システムが導入されています。エネルギーマネジメントシステムによって省エネルギーに向けた適切な稼働が実現できます。エネルギーマネジメントシステム(EMS)が注目される背景エネルギーマネジメントシステムが注目される背景には「地球全体の気候変動」や「資源枯渇」などの環境問題への対応が求められていることがあります。とくに、カーボンニュートラルの達成が重要視されています。カーボンニュートラルとは、植林や森林管理などにより温室効果ガスの吸収量を増加させ、その排出を全体として実質的にゼロにする取り組みです。地球温暖化防止には、エネルギー起源Co2の排出量削減が欠かせません。しかし、経済成長と人口増加にともない、今後も世界のエネルギー消費量は大幅に増加すると予測されています。そのため、持続的なエネルギー管理が必要不可欠なのです。2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、官庁と民間が協力し、Co2削減や省エネ対策に取り組む必要があります。エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類エネルギーマネジメントシステムは、管理する対象ごとに呼び名が異なり、大きく5つに分類されます。種類名概要FEMS(Factory Energy Management System)工場のエネルギー管理を行い、生産性向上とエネルギーコストの削減を両立させます。BEMS(Building Energy Management System)オフィスビルや商業ビルを対象に、無駄なエネルギー消費を抑えます。HEMS(Home Energy Management System)各世帯を対象に、外出先からのモバイルデバイス操作で照明や空調を遠隔制御し、エネルギー消費を削減します。MEMS(Mansion Energy Management System)マンション全体のエネルギー使用量を可視化し、住民のエネルギー消費を抑制します。CEMS(Community Energy Management System)電力会社など供給側が、発電や電圧抑制などを行い、電力供給の効率化を図ります。これらのシステムは、管理対象こそ異なりますが、エネルギー消費量を管理し、改善を繰り返すという基本的な役割は同じです。各種類について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。関連記事:エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類とは?メリット・デメリットも紹介エネルギーマネジメントシステム(EMS)のメリットエネルギーマネジメントシステムには、以下の3つのメリットがあります。消費エネルギー量の「見える化」機器の稼働状況の「わかる化」エネルギー運用の「最適化」これらのメリットがわかると、システムの効率的な活用方法がより理解しやすくなります。それでは、順番に見ていきましょう。1. 消費エネルギー量の「見える化」エネルギーマネジメントシステムを導入すると、各設備のエネルギー消費量をリアルタイムで可視化できます。センサーやカメラを活用してエネルギーの使用状況のデータを蓄積し、Co2排出量も算出することが可能です。これにより、エネルギーの最適化とともに、環境への影響を具体的に把握できるようになります。Co2排出量の算出方法は環境省が提示しており、以下の計算式で求められます。Co2排出量=活動量(生産量・使用量・焼却量など)× 排出係数エネルギーマネジメントシステムを使って、エネルギー消費とCo2排出量の関係を把握すると、企業や施設が持続可能なエネルギー対策を考えられるようになるでしょう。2. 機器の稼働状況の「わかる化」エネルギーマネジメントシステムでは、機器の情報を収集し、過去のデータと比較・分析を行います。これにより、エネルギーを効率的に使えていない機器や、非効率な稼働状況を特定することが可能です。また、機器の稼働効率や消費電力の変動から、老朽化や故障の兆候を把握できます。異常を即座に検知し適切なメンテナンスを実施すると、機器の寿命を延ばし、運用コストの削減につながるでしょう。3. エネルギー運用の「最適化」エネルギーの「見える化」「わかる化」に基づき継続的に改善を繰り返すと、常に効率的なエネルギー運用を行えます。エネルギーマネジメントシステムは、各設備のエネルギー使用状況を詳細に把握し、どのタイミングでどの機器を稼働させるべきかを自動で判断します。その結果、最適な運用ができ、コスト削減や環境負荷の軽減が期待できるのです。たとえば、電力使用量のピークを避けるために、複数の機器を順次稼働させることでエネルギー量を調整し、コスト削減に貢献します。このような最適解を、エネルギーマネジメントシステムは的確に導き出してくれます。エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入課題エネルギーマネジメントシステムを導入する際には、大きく2つの課題があります。導入コストが高くなる既存の設備がエネルギーマネジメントシステムに対応していないケースがあるエネルギーマネジメントシステムを導入するには、センサーやカメラなどの設備導入や運用サービスの契約といった初期投資が必要です。このコストは、規模や導入範囲によって大きく変わります。企業や施設にとっては大きな負担となるでしょう。また、既存の設備がエネルギーマネジメントシステムに対応していない場合、設備の更新も必要になります。事前に提供事業者と相談して、エネルギーマネジメントシステムが既存の設備に適合するかを確かめましょう。専門家のアドバイスをうけながら、最適なシステムを選ぶことが重要です。エネルギーマネジメントシステム(EMS)の補助金制度エネルギーマネジメントシステムの導入には多額の費用がかかるため、企業が導入をためらうケースが多くあります。その参入障壁の高さを下げる施策として「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」という補助金制度が設けられており、利用者は活用可能です。省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、省エネ設備・機器の更新費用等の一部を支援する制度です。この補助金制度は、経済産業省の資源エネルギー庁が主体となり、一般社団法人環境共創イニシアチブが窓口を担当しています。同団体は、電通や大日本印刷などの多くの企業で構成され、エネルギー技術革新や環境市場の創出に取り組んでいます。次に、具体的な補助金内容について見ていきましょう。省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金では、目的に応じて3つの類型から選択できます。類型名事業内容導入支援する設備やシステム工場・事業場型先進設備やシステムの導入、オーダーメイド型設備の導入を支援発電システム、空調システム、真空洗浄機など電化・脱炭素燃転型電化や脱炭素目的の燃料転換をともなう設備の導入を支援産業ヒートポンプ、低炭素工業炉、高性能ボイラなどエネルギー需要最適化型エネルギーマネジメントシステム機器を導入し、エネルギー需要最適化を図る対象となる設備は、空調・照明・蓄電池・ボイラなどなお、機器導入にかかる設計費・設備費・工事費が補助対象に含まれます。これにより、設備の選定から設置までの全体的なコストが軽減され、企業は初期投資の負担を減らせるでしょう。また、補助金の上限額は1億円で、企業の規模によって補助率が異なります。補助金制度の案内は、環境共創イニシアチブのサイトに掲載されています。ただし、年度ごとに公募期間が決まっているため、申請の際にはタイミングに注意しましょう。エネルギーマネジメントシステムの導入事例エネルギーマネジメントシステムの導入事例を2つご紹介します。大阪市浪速区役所富士電機山梨工場これらの事例を通じて、具体的な導入効果や活用方法がよりわかりやすくなるでしょう。一つひとつ解説していきます。大阪市浪速区役所大阪市浪速区役所は2002年に竣工し、2012年にエネルギーマネジメントシステムを導入しました。エネルギーマネジメントシステムでは、当日の電力使用量状況を毎時単位で把握できます。そして、設定した目標値との比較によりメールで警報発信を行い、節電・省エネ活動を喚起することが可能です。たとえば、浪速区役所では以下の取り組みが行われています。地下駐車場や各階エレベーターホール前の照明の間引きを実施最大電力のピーク時間帯を把握し、空調運転の時間帯をずらすことで契約電力を28kW削減デマンド目標管理について、警報発信メールを活用し、職員への節電意識の向上・自発的取り組みの啓発このシステムを導入すれば、既存の施設でも効果的なエネルギー管理が可能となります。富士電機山梨工場半導体チップを生産している富士電機山梨工場は、エネルギーマネジメントシステムを取り入れ、5年間で34%のエネルギー使用量削減を達成しました。同施設ではセンサーでデータを収集し、解析ソフトウェアを使用しながら蓄積された実績データを多角的に分析します。それにより、エネルギーの無理・無駄・ムラの発見につなげます。そして、AIでエネルギー需給を予測し、最適な運転パターン計画の立案をするのです。同施設は24時間稼働しており、非常に多くのエネルギーを必要とします。そのため、効率的なエネルギー管理は生産性を維持しつつ、環境負荷軽減に大きく寄与しているでしょう。まとめこの記事では、エネルギーマネジメントシステムの仕組みや種類、導入すると得られるメリットを解説しました。エネルギーマネジメントシステムの導入は、消費エネルギーの「見える化」、機器の稼働状況の「わかる化」、そしてエネルギー運用の「最適化」による効率的なエネルギー管理を実現します。これにより、省エネ活動や環境への配慮が促進され、企業や施設の運営コストの削減にもつながるでしょう。株式会社メンテルでは、多店舗展開する小規模店舗を対象に電力消費の分析を行い、エネルギーマネジメントシステムを導入するサポートをしています。電力消費の見える化や、冷暖房・照明の最適化による省エネ効果を実現し、複数の店舗で具体的なコスト削減方法を提示しています。店舗の他にも、大型商業施設における熱供給の最適化や、オフィスにおける空調制御やセンサデータを用いた分析にも取り組んでいます。エネルギーマネジメントシステムの導入に興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。