「地球温暖化はCO2だけが原因でないって本当?」「脱炭素は意味がないの?」このような疑問がある方もいるのではないでしょうか。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業や行政が次々と対策を打ち出しています。しかし、脱炭素への取り組みに胡散臭いと感じる声も少なくありません。今回は、地球温暖化の複雑なメカニズムと脱炭素の意義を、反対意見も交えてわかりやすく解説していきます。脱炭素とは脱炭素とは「カーボンニュートラル」とも呼ばれます。人間の活動による温室効果ガスの排出量と、森林による吸収量を差し引いて、実質的な排出量をゼロにする取り組みです。地球温暖化による気候変動の被害を抑制するために必要です。現在の技術では、完全に二酸化炭素を排出しないエネルギーだけに頼ることはできません。そのため、人間活動によって生じる二酸化炭素を、植物に吸収させ、温室効果ガスを0にします。2015年にパリ協定が採択され、120以上の国と地域が2050年までにカーボンニュートラル社会を目指しています。参考:環境省|脱炭素ポータル脱炭素は意味ない?ある?脱炭素は地球温暖化の防止に必要です。IPCCの第6次評価報告書は「人間の影響が大気、海洋、及び陸域を温暖化させてきたことに疑う余地がない」と結論付けています。◾️IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)とは「気候変動に関する政府間パネル」を意味する。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された政府間組織。気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることが目的。参考:環境省|IPCCとは気候モデルのシミュレーションや分析手法の進歩により、地球温暖化の原因に対して科学的なデータが蓄積されています。脱炭素が意味ないと言われている理由地球温暖化の原因には「人間の活動」という科学的な根拠があります。ではなぜ、脱炭素に意味がないといわれているのでしょうか?その背景には、脱炭素のさまざまな課題があります。日本だけの取り組みでは不十分なため再生可能エネルギーの生成にCO2を排出するため地球温暖化の原因はCO2以外にもあるためより深く理解するために、ひとつずつ見ていきましょう。日本だけの取り組みでは不十分なため脱炭素の取り組みは日本だけが行っても不十分です。資源エネルギー庁によると、世界の温室効果ガス排出量(2018年)のうち、日本が占める割合はわずか3.2%。それに比べて中国は28.6%、アメリカは14.7%、インドは6.9%も占めます。出典:経済産業省 資源エネルギー庁|第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組温室効果ガスの排出量が多い3ヵ国が全体の50.2%を占めます。中国やアメリカ、インドのような二酸化炭素を排出量が多い国が脱炭素に取り組むことが重要です。しかし、温室効果ガスを削減するには多大なコストがかかります。すべての国が足並みをそろえて脱炭素に取り組むことは容易ではありません。そのため、日本が脱炭素に取り組んでも意味がないといわれているのです。再生可能エネルギーの生成にCO2を排出するため太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電では、二酸化炭素が排出されません。しかし、上記の設備を製造する過程では、温室効果ガスが排出されます。たとえば、太陽光発電には太陽光パネルが必要です。太陽光パネルの原材料の採掘には、化石燃料で動く掘削機を使用します。また、工場での製造では大量の電力を必要とし、運搬・設置においても化石燃料が消費されます。このため、脱炭素は意味がないという意見があるのです。なお、太陽光パネルを製造して再生可能エネルギーを利用したほうが、火力発電やその他の発電方法を使うよりも温室効果ガスの排出量は少ないとされています。種類温室効果ガス排出源単価電力全体の平均約360g-CO2/kWh化石燃料火力発電全体の平均約690g-CO2/kWh太陽光発電の平均約17~48g-CO2/kWh出典:科総研|太陽光発電の特徴1より株式会社メンテルが作成そのため、再生可能エネルギーによる発電で完全に温室効果ガスをゼロにはできませんが、排出量を抑える効果はあります。地球温暖化の原因はCO2以外にもあるため温室効果ガスには、二酸化炭素だけでなくメタンや一酸化二窒素なども含まれます。とくにメタンは、二酸化炭素に次いで地球温暖化への影響が大きいです。そのため、二酸化炭素以外の温室効果ガスも抑制しないと意味がないとされています。ただし、二酸化炭素は人間の活動により排出される温室効果ガスの約75%を占めます。そのうちの多くが化石燃料の燃焼による排出です。地球温暖化の原因は二酸化炭素以外にもありますが、二酸化炭素がもっとも影響が大きく削減効果もあるでしょう。参考:環境省|報道発表資料脱炭素が求められる訳ここまで述べたように、脱炭素には意味がないという意見もあります。しかし、それでも脱炭素が求められる理由は、以下の通りです。長期的な環境保全効果がある持続可能な社会を実現できる技術革新による経済効果がある脱炭素が本当に必要なのか理解するために、詳しく解説していきます。長期的な環境保全効果がある脱炭素には長期的な環境保全効果があります。もし現在のペースで二酸化炭素を始めとした温室効果ガスが排出され続けると、以下のような地球環境への影響が懸念されます。水利用量の減少・干ばつの増加広範囲にわたるサンゴ礁の死滅感染症の媒介生物の分布変化洪水・暴風雨の被害増加穀物生産量の減少すでに日本でも渇水リスクや大雨、熱中症患者の増加など、地球温暖化が原因と考えられる事象が生じています。上記から脱炭素の取り組みによる地球環境の保全が必要です。参考:環境省|温暖化から日本を守る 適応への挑戦持続可能な社会を実現できる二酸化炭素を排出する主な原因は化石燃料の燃焼です。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は有限です。今の消費ペースだと、石油は53.5年、天然ガスは48.8年、石炭は139年ほどで枯渇するとされています。化石燃料確認埋蔵量から算出した可採年数石油53.5年石炭139年天然ガス48.8年出典:資源エネルギー庁| 令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)より株式会社メンテルが作成化石燃料への依存は持続可能性の観点から望ましくありません。資源の枯渇を防ぐためにも再生可能エネルギーへの転換が求められています。再生可能エネルギーにより省エネと脱炭素を目指す理由は、以下の記事で解説しています。省エネと脱炭素の違いは?脱炭素社会を目指すメリット3選技術革新による経済効果がある脱炭素に関する技術革新は、新たな市場創出や雇用機会の拡大、コスト削減などの経済効果をもたらします。技術革新の要因のひとつが、経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。その目的は、脱炭素技術によって成長が期待される14分野を選定し、国際競争力を高めることです。出典:経済産業省|グリーン成長戦略(概要)上記の政策により新技術が確立されると見込まれ、2050年には経済効果が約290兆円、雇用効果は1,800万人と試算されています。まとめ脱炭素には意味がないという意見もあります。しかし、地球環境を保護するために、温室効果ガスの削減は必要です。また、企業が成長して持続可能な社会を実現するためにも脱炭素への取り組みは欠かせません。株式会社メンテルでは、電力消費の見える化や空調・照明の最適化によりコスト削減や脱炭素化につなげるサービスを展開しております。建物の脱炭素を検討しているご担当者様は、この機会にぜひご相談ください。