経済産業省によると、オフィスビルにおける空調のエネルギー使用量の割合は、全体の48.6%とされています。これはオフィスビルのエネルギー消費量のなかで、もっとも大きな割合を占めます。そのため、空調の省エネ化ができれば、毎月の光熱費を大きく減らすことが可能です。しかし、空調を省エネにする方法は?と問われると、わからない方もいるでしょう。そこで本記事では、空調を省エネにする方法とその効果を解説します。毎月の空調の稼働にかかる費用が高く、経費が圧迫されて困っている方は、ぜひご覧ください。空調の省エネ化が必要な背景空調を省エネにする必要がある背景には物価の高騰があります。ロシアによるウクライナ侵略により、世界的なエネルギー危機に陥ったことで、電気代も高騰したのです。以下の経済産業省が発表する電気料金単価の推移をご覧ください。◾️家庭用電気料金月別単価の推移(青:規制料金/オレンジ:自由料金)出典:経済産業省・資源エネルギー庁|電気料金単価の推移2021年4月に27円/kWhだった電気代は、2022年10月には35円/kWhまで値上がりしました。1年6ヶ月で電気料金は約1.3倍になりました。つまり、今までと同じように電気代を使っていると、効果は変わらないのに、電気代だけ1.3倍になるのです。そのため、ビルや商業施設の管理者は、健全な経営をするために空調設備の省エネにして、光熱費を削減する必要があります。空調を省エネにする2つの方法空調の省エネにする方法は、大きく以下の2つあります。パッシブ手法:光や風などの自然エネルギーを活用して省エネにする方法アクティブ手法:設備や機械などを活用して省エネにする方法本章ではそれぞれどのような手法なのかを解説します。パッシブ手法により空調を省エネにする方法パッシブ手法を用いて省エネにする方法は、主に以下の5つです。設計段階での省エネ設計にする直射日光を遮断する自然光を取り入れて暖房の負荷率や稼働率を減らす自然風を取り入れ冷房の使用を減らす断熱効果のある室内を設計するこれらはすべて、設備機器に依存せず、自然の風や熱を利用することで、建物内を快適な温度にするものです。設計段階での省エネ設計にするパッシブ手法を用いて空調を省エネ化するには、省エネを考慮して設計をすることが重要です。パッシブ手法は自然エネルギーを活用して省エネ化する方法だからです。設計段階で省エネが考慮されていないと、そもそもパッシブ手法を行えない可能性があります。たとえば、自然光を取り入れて部屋を暖かくするには、天窓が効果的です。また、部屋を涼しくするために風通しをよくするにも、適切な位置に窓を設置する必要があります。これらのパッシブ手法は、設計段階で省エネ化を意識しないとできません。設計段階から省エネ設計を取り入れることがエネルギー消費量の最適化につながります。直射日光を遮断する冷房の使用によるエネルギー消費量を抑える方法として、直射日光を遮断することも重要です。日射量の多いエリアでは、直射日光を遮断しないと室内に熱がこもるためです。直射日光を遮断する方法としては、すだれやシェードなどを活用するのが効果的です。オフィスビルで、屋外にすだれやシェードを取り付けられない場合は、ルーバーブラインドを設置したり、日射遮蔽ガラスを採用したりするのがよいでしょう。このような省エネになる工夫をして、自然光の量を調節すると、冷房の稼働率と負荷率を抑えられます。自然光を取り入れて暖房の負荷率や稼働率を減らす日射熱を取り入れると暖房の稼働率を減らせます。自然光を集熱し、蓄熱した熱を活用すると、暖房の稼働率を減らしても室内が寒くなりにくいのです。たとえば、屋根を二重にして自然光の温かさを、建物内に行き渡らせる技術があります。日中に太陽熱を取り入れて、ファンを使い床下に集熱すれば夜も温かく過ごせます。床下に当たった暖かい空気が、部屋に広がるためです。出典:国土交通省ただし、蓄熱は断熱材や蓄熱材の使用が必要になったり、暖かい空気を部屋に送るために緻密な計算が求められたりするため、設計段階から取り組まなければなりません。自然風を取り入れて冷房の使用を減らす自然風を取り入れると建物内を換気でき、冷房の使用を減らすことが可能です。この手法は夏に有効です。涼しい時間帯に施設内の窓を開けて自然風が入るようにすると、冷房の温度を下げても室温が変わらない可能性があります。また、オフィスビルの場合は、換気口や開閉可能な窓を配置すると、建物内に自然風を送ることができます。設計段階から換気を行うための設備を取り付けることで、自然風による省エネ化を行いやすくなるのです。断熱効果のある室内を設計する省エネの効率を上げるためには、断熱効果の高い室内設計が求められます。断熱できていない場合、外気温度の変化に伴って室温が変わり、空調に負荷がかかるためです。そのため、隙間風をなくして、外気温度に左右されない設計をする必要があります。断熱窓を取り入れたり、壁に断熱性の高い素材を使用したりすると、室内の温度の大きな変化がなくなります。断熱効果のある素材の使用と設計が必要になるため、設計時から省エネ化を念頭に置くことが重要です。アクティブ手法による空調省エネの方法ここからは機械の力に頼るアクティブな省エネ化の方法について解説します。使用設備機器の運用方法の見直し暖房設備用の冷却熱生成の省エネ化自動制御やITの活用アクティブ手法は、設計段階から省エネを考える必要がなく、既存の建物に対しても対応できるため、汎用性が高いといえます。使用設備機器の運用方法の見直し使用している設備の運用方法を見直すだけでも、空調の省エネ化につながります。たとえば、ビル全体の空調の使用状況を分析して、外調機の運転スケジュールを見直すだけでも、運転時間が減り光熱費の削減になります。現在使用している機器の運用方法を見直すと、省エネ化を実現できます。暖房設備用の冷却熱生成の省エネ化暖房機器の放熱を抑制する手段として、冷凍機を運転し、冷水を精製して活用する方法があります。この方法では、暖房と同時に冷凍機を運転する必要があります。しかし、外気温が10℃未満であれば、冷凍機を運転せずに冷水供給ができるため、冷凍機を使用しない分、省エネになります。これをフリークーリングと呼んでおり、冬季の外気温が低い日のさらなる省エネを可能にします。参考:環境省|フリークーリング及び外気導入による空調の省エネルギー自動制御やITの活用空調の使用量や室温などを定期的にモニタリングしながら、空調の最適化を目指すAIでの空調制御も省エネに効果的です。無駄な空調の使用を抑制してくれるだけでなく、AIの学習により人流を予測することで、事前に空調をON/OFFにするなどの設定も可能です。ITを活用することで、空調の最適化を目指す手法はこれからの省エネのトレンドになるでしょう。空調を省エネにする3つの効果空調を省エネにする効果を知ることは重要です。空調の省エネ化は、経済的・環境的に必要な取り組みとされているためです。そこで本章では、空調を省エネにする効果を3つ紹介します。光熱費の削減地球温暖化の抑制企業全体のイメージアップ省エネ化によってもたらされる効果について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。光熱費の削減空調を省エネ化すると、光熱費の削減につながります。オフィスビルや商業施設などのエネルギー消費量のうち、空調が占める割合は3〜4割と言われています。この割合は、空調を省エネにすると減らせます。環境省によるとエアコンの設定温度を1℃緩和した状態にすると、消費電力は暖房時は10%、冷房時は13%削減されます。また、室温は夏季が28℃、冬季が20℃にするのが望ましいです。たとえば、夏季に室温が25℃になっていたら、エアコンの設定温度を3℃緩和するだけで、約39%もの電力が削減されます。家庭のエアコンと商業施設などの空調設備では、電力の減少率が異なる可能性があります。しかし、このように省エネの方法を知っているだけで、大幅に光熱費を削減することが可能です。参考:環境省|家庭のエネルギー事情を知る地球温暖化の抑制空調を省エネにすると、地球温暖化を抑制できることもわかっています。地球温暖化の原因は、二酸化炭素やメタン、フロンガスなどの温室効果ガスの増加だとされています。このうち二酸化炭素は、石油や石炭の使用によって発生します。空調設備を使うには電力が必要で、それを生成するには石油や石炭を消費します。その結果、二酸化炭素が増えて、地球温暖化につながります。空調を省エネにすると、過剰な電力消費を抑えられ、温室効果ガスの削減に貢献できるのです。企業全体のイメージアップ空調を省エネにすると、企業のイメージアップにつながります。SDG'sにつながるためです。SDG'sとは、脱炭素化社会の実現に向けた取り組みを指します。この取り組みは、地球温暖化や貧困、飢餓などを解決するために、各企業がそれぞれのアイデアを出し、課題解決に取り組むものです。具体的には、以下の17の課題解決に向けた取り組みです。出典:外務省|持続可能な開発目標(SDGs)たとえば、ビルの運営においてはメンテナンスによる建物の長寿命化やエコチューニング、環境に配慮した資材の活用などでSDG'sに貢献できます。省エネもSDG'sに向けた取り組みの一環です。SDG'sへの取り組みとして省エネ活動をしていることを周知させると、企業のイメージアップにつながります。空調を省エネにする方法|まとめこの記事では、空調の省エネ方法として、パッシブ手法とアクティブ手法を紹介しました。空調の省エネにすると、光熱費の削減やビルの管理会社のイメージアップにつながるため、できるだけ早く施策を講じるのがよいでしょう。しかし「もっと効率的な省エネ化の方法はないのかな?」と考える方もいるのではないでしょうか。そのような方は、ぜひ株式会社メンテルが取り組む「空調のAI制御」を覗いてみてください。AIがビル全体の空調使用量を分析して必要ない箇所への空調を止めたり、人流による室内温度のむらを調整したりします。空調を省エネ化しながら、快適さも維持できる空間を作ることが可能です。ご興味がある方はWebサイトを覗いてみるのはいかがでしょうか。